=山月記=

 

【朗読CD】

 

先日、山月記が朗読CDになると聞いて早速買ってきた。

 

脚本家の人は原田徹一さん。

声優さんは、李徴が小西克幸さんで、袁慘は三木眞一郎さん。

 

まずCDを聞く前に、おまけの脚本家、原田さんのあとがきを読む。

そして、李徴が虎になったことを『良かった事』というか、とりあえずポジティブにとらえていて、驚いた。

私は作中の李徴のセリフの『こんな獣に身を落とすのだ』というのを、言葉のとおりにしか受け止めていなかった。

だからてっきり『虎になった自分』というのは、李徴自身が軽蔑しているものだとばかり思っていた。固定観念がしっかり出来上がっていたのである。

 

それが覆されて(実際作者がどんなつもりで書いたのかはわからないが、全く反対の意見を目の当たりにして)、とても衝撃を受けたのだ。

 

そして驚いた事はもう一つある。

 

原作だと李徴と袁慘が別れたところで話は終わっているが、原田さんはそのあとに袁慘の独白を加えた。

この袁慘の独白というのが、まさに自分が感じていた事と同じだったのである。

 

そもそも、こういった話をする相手が周りにいないので(いたらいたで、私の性格上、大変な事になりそうだが)他人の意見や感じ方などは全くもって知りえなかったわけだが。

 

袁慘は独白の中でおおよそこんな事を言ったのだ。

『今の生活に不満があるわけではない、今までの生き方にも後悔はしていない。しかし、生活の全てをなくしてまで、詩作にふけっていた李徴が、羨ましくてならないのだ・・・』

『・・・私も、虎になりたい・・・・』

・・・・・と。

 

私はどちらかといえば袁慘よりの人間だ。

そして常に憧れを抱いてきた生き方が、李徴のような生き方なのである。

この独白のあいだは、それを自分の気持ちとして聞いていた。

 

ただ、ひとつ気にかかることといえば、袁慘の『李徴の作品に対しての足りない部分〈非常に微妙な点において・・・〉』というあたりをすっかりスルーしたこと位か・・・。

わざわざ()を使って書いているくらいだから、『そんなことはどうでもいい』わけではないと思うのだが・・・。

まぁ、完成や完結が好きではない私のことなので、あくまでも個人的なところで全てに共感する事は出来ないと言うわけで、けして批判しているわけではない。

原田さんが脚本化した【山月記】は、これはこれで一つの作品として出来上がってしまった。その分考える余地が減った事が少し残念なだけで、この脚本の【山月記】も、間違いなく大好きなのである。

 

 

 

 

私はこのCDによって、また一つ考え方が増えた。これはとても嬉しいことだ。

これからも、他人の考える山月記について、もっと知っていきたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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